自賠責保険における後遺障害等級認定制度と交通事故に基づく損害賠償請求訴訟とは、本来は別個独立で、自賠責保険の後遺障害等級の認定結果が裁判所の判断(判決など)を法的に拘束することはありません。
しかし、交通事故の損害賠償訴訟を集中的かつ大量に扱う東京地裁民事第27部は、自賠責保険の後遺障害等級認定制度について、「自賠責保険で後遺障害等級のいずれかの等級に該当すると認定された事実があると、特段の事情のない限り、後遺障害等級に見合った労働能力喪失率と慰謝料の額について一応の立証ができたと考えられるから、裁判所は、被告からの十分な反証のない限り、同様の等級の認定をすることが多」い、という説明をしています。※1
これは、裁判所が、後遺障害等級の認定の専門的かつ公正中立な損害賠償保険料率機構が行う後遺障害等級の認定の判断を尊重していることの表れで、交通事故の被害者にとっては、訴訟に先立って、自賠責保険金の後遺症認定を得ておくことが、その後の訴訟活動を有利に展開しうることを意味しています。
※1 東京地裁民事第27部における民事交通事件訴訟の実務について『民事交通訴訟における過失相殺の認定基準<全訂5版>』 別冊判例タイムズ16巻11~12頁」を参照してください。