交通事故による後遺障害について

むち打ち症などの神経症状について

1 むち打ち症とは

むち打ち症とは、自動車などに乗っているときに、急停車したり、他の自動車から追突や衝突されたりした際に、首がムチのようにしなるようになって受ける衝撃により引き起こされる症状の総称をいいます。

このむち打ち症などの分類としては、次の分類によるのがわかりやすいと思われます。

① せき椎損傷

骨折あるいは脱臼のある場合ですが、単にむち打ち症と呼ばれることは稀です。

② 外傷性頚部症候群

骨折及び脱臼のない場合で、こちらの方が、一般的に「むち打ち症」と呼ばれる症状です。

さらに、5つに分類されます。

 頚椎捻挫型

局所の所見だけのものがこれにあたります。通常は、筋肉や靭帯などの軟部組織の損傷にとどまるものです。

 神経根型

神経根の圧迫などによる障害が、これにあたります。

 せき髄損傷型

せき髄の損傷に及んでいるものです。

 バレ・リユウー症候型

自律神経の一種である交換神経に損傷を負った場合で、頭痛やまめい、吐き気、耳鳴りといった症状が出ます。

 脳髄液減少症

脳髄液髄減少症とは、脳やせき髄の周りにある髄液が漏れ出して減少してしまい、頭痛やめまいなどの様々な症状が出る疾患です。

2 自賠責保険におけるむち打ち症

(1) 障害の部位

自賠責保険における後遺障害等級認定制度において、むち打ち症は、「神経系統の機能又は精神の障害」のうちの「末梢神経障害」、すなわち、局部の神経症状の一つとして位置づけられています。

そして、

① 「局部に頑固な神経症状を残すもの」が12級13号

② 「局部に神経症状を残すもの」が14級9号

とされます。

(2) 12級13号と14級9号の違い

「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号)とは、その神経症状が、他覚的所見などにより医学的に証明できるものをいうとされています。ここでは、画像所見と神経学的所見などとの整合性が重要なポイントとなります。

「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)とは、その神経症状が、医学的には証明できる程度には達していないが、事故態様や受傷状況、自覚症状や通院実績の一貫性・継続性などの観点から、その症状が交通事故によるものであるとの医学的な推定ができるをいうとされます。

(3) 14級9号と非該当との違い

画像所見や神経学的所見が全くないもの、自覚症状や通院実績に一貫性や継続性がないものなどは、当該神経症状と交通事故との間に因果関係を認めることはできないので、非該当となることが多いです。

 

3 裁判実務におけるむち打ち症

後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益について損害賠償請求できます。

なお、その際に、加害者側から素因減額が主張されることがあります。

(1) 後遺障害慰謝料

ア 12級13号

いわゆる「赤い本」では290万円、いわゆる「青本」では250万~300万円とされます。

イ 14級9号

いわゆる「赤い本」では110万円、いわゆる「青本」では90万~120万円とされます。

(2) 後遺障害逸失利益

ア 12級13号

労働能力喪失率は、自賠責保険の基準である14パーセントとされることが多いです。

労働能力喪失期間は、67歳までの期間ではなく、10年以下に制限されることが多いです。

イ 14級9号

労働能力喪失率は、自賠責保険の基準である5パーセントとされることが多いです。

労働能力喪失期間は、67歳までの期間ではなく、5年以下に制限されることが多いです。

(3) 素因減額

むち打ち症による後遺障害と交通事故との間に因果関係(原因と結果の関係)はあるのだけども、被害者に事故前に持っていた既往症がある場合に、現在ある後遺障害のうちの何割かは、既往症が原因であるとして、損害額の減額を加害者側から主張してくる場合があります。

しかし、最近の裁判例の傾向を見ると、既往症が、通常の年齢に鑑みて、病的なものでない限り、安易に素因減額による損害額の減額を認めない傾向にあります。

そこで、加害者(あるいは加害者側保険会社)から、既往症による素因減額を主張された場合は、弁護士に相談されることをお勧めします。

 

なお、当事務所におけるむち打ち症などの事案の解決事例は、以下をご覧ください。

主婦の追突事故によるむち打ちの事案

むち打ち症と素因減額

 

※1 頚椎が過伸展された後に、過屈曲されて、元に戻るという一連の作用。